本日は、自称アイドル評論家のヨン・キモオタさんをお招きしています。
時はアイドル戦国時代。先生のアイドル人生などを踏まえつつ、先日のAKB48のドームコンサートなどについてお伺いしていきましょう。
”今後絶対売れる!なんて思ってない。ただ自分が夢中になっていっただけ”
―――アイドルを好きになったのは、いつからですか?
そうですね。私がアイドルを好きになったというのは、つまりAKB48を好きになったときです。父の仕事の関係で、秋葉原のドンキ・ホーテ8階の専用シアターが建設中の時代から出入りはしていました。私は小学生の頃、モーニング娘。の全盛期を迎えているのですが恥ずかしながら、思春期特有の”他人と違うぜ!”感を出したいがためか、アイドル?え?(笑)と思って生きてきていまして。シアターなんか連れてかれても、全然興味もなかったんです。保護シートの上を歩きながら、ずっとふーん、って思ってたんですが。
―――それが変わっていったのはいつですか?
忘れもしない、2005年12月8日。私は親から呼び出されていたので学校が終わってから、シアターに向かいました。ついたときには、ちょうどマスコミ専用披露会が行われていたのですが。そこで舞台上のおんなのこたちを見た瞬間真っ白になりました。どっからどうみてもふつうの、ふつうよりちょっとカワイイおんなのこたちなだけなのに、ものすごく輝いてて。忘れもしない。「桜の花びらたち」を歌って踊りながら、緊張しながらも、必死でニコニコしている。あのときのワクワク感で、私は一気にオタクにさせられてしまいましたよ(笑)秋葉原、秋元康って言って周りはちょっと引いて見るところから初めていったけど、「見ればわかる」と思っていました。見ればわかる、見なければわからない。この、現実から一歩だけ先にある、分かりづらい輝き。そんなものに、私はあっという間に魅了されてしまいました。
私は、スタッフとしても若干ですが携わりながらも、推しメン*1なんかも作っちゃったりして(笑)父がAKB48の仕事から離れた7年後の今でも魅了され続けています。他のアイドルをかじったりもしたけど、一番気になっちゃうのはAKBなんですよね。
*1推しメン:好きな(一押しの)メンバーのこと。ちなみに、ヨン先生が一番初めに推したのはちるちること星野みちるちゃんだそうです。
”それでもあくまで、「アイドル」は夢を見させる仕事だから。”
―――今のAKB48の活躍はどう思いますか?
従来のCDの販売方法を次々と覆しながら、巨大化していく。ミリオンを連発するようになっていくとは、当初思いもしませんでしたね。AKB48の魅力というのは、やっぱり「一歩だけ先にあること」なんだと思います。芸能人と会ったとき、ファンっていうのは、よく「ほんとにいたんだ」とか言ったりするでしょ。でも、AKBの場合は「やっぱりいたんだ」みたいな。「写真より、カワイイ」っていう、もともと存在に現実感がある。成長を見守るというコンセプトや、「会いにいける」というコンセプトがもたらす距離感だと思います。「会いにいける」は劇場から始まりましたが、ますます進化していて、ブログやtwitter、ぐぐたす*2など、様々なコンテンツで今何をしているのかが分かるくらい身近なところまで、AKBの存在は私たち視聴者側に引き寄せられている。ぐぐたすでは、検閲がないため愚痴をこぼしたりすることまであるしね。それは自分自身だったり、運営にだったり、人間関係にだったり。みんな様々なことに悩んでいる。人間の、人間としての感情の動きや、弱さまでもが伝わってくる環境にあるというのが、現代のAKB48における大きな特徴だと思います。
しかし同時に、その距離の線引きっていうのは難しくて。ファンも、メンバーまでもが、時々距離が分からなくなって、ファンと繋がっちゃう子が出てきちゃうんですね。私は、これはアイドルとして最もいけないことだと思いますね。オタクは第一の理由に相手以前に「処女性」をあげることが多いけど、私としてはやっぱりファンと繋がるっていうことにとんでもなくガッカリ感を覚えます。それはもう、「アイドル」なんか名乗っちゃいけないよ、と。まあギリギリ感が売りな以上、仕方なかったりするんでしょうね。恋愛禁止なんかされてるばかりに身近なちやほやしてくれる男性に目がいってしまうのかもしれません。 でも、そういうことやってる子はやっぱり干されてほしいな*3、って思っちゃうのが正直な気持ちです(笑)恋愛禁止が大事なのではなく、プロとして、ファンに手を出しちゃあ終わりってことです。
あとは、「アイドル」っていうのは夢を見させる仕事だから、愚痴の使い方も考えさせなきゃいけない。人の気持ちをマイナスに向かわせるような愚痴を書くっていうのも、よくないなあと思います。愚痴を、「俺が支えてあげるからね!」って思わせる材料に変えること。それも、その子の才能ですよね。そしてぐぐたすでは、誤爆が多い。検閲がないから、友達に送ろうと思ってたメールを間違えてぐぐたすにあげて問題になったり・・・。これだけ大きい完成された組織のはずなのに、こんな地下アイドルみたいな問題が起こっちゃうんですよ、AKBっていうのは。そこも、怒ったり「もうオタやめる!」とか言いながらも、なんか気になっちゃったりするんですよね。
*2ぐぐたす:google+の略。検閲がなく、動画もあげれるためリアルなアイドルのおんなのこたちの気持ちが見えると評判に。一時は、秋元康氏自体がドハマリし、常に駐在しているとファンの間で話題になった。
*3干される:人気が出るという意味でつかわれる「推され」の反対、「干され」。干されるというのは、選抜から外されたり、 仕事がなくなったときに使われる。
”だからこの子たちの後ろに、道は続いてきたんだ。”
―――今回の東京ドーム及び前田敦子さんの卒業はどう思われましたか?
「卒業」という、アイドルという世界に出来上がってしまっていた制度がAKBに到達するのも、思いの外早くて。結成から半年後に、宇佐美友紀ちゃんが辞めてから、7年という歴史の中でいろんな女の子がやめていきました。同時に、SKE48、NMB48、HKT48、JKT48も含めたら爆発的に増えていって、20人が10倍近くになってたりするんだけど・・・。そんな人数の中でも、「矢面に立ち続けた」前田敦子ちゃんの卒業は、やっぱり他とは違うんですよね。もはや、日本のテレビ業界、CD業界でいろんな影響をもたらさらざるを得なくなったAKBのセンターの「卒業」は。古参*4としてはすごくさみしいけれど、この人気絶頂の中やめるっていうのはアイドルとしては「持ってる」と思ってしまいます。私にとって最高のアイドルの形は、山口百恵さんなので。アイドルが絶頂期にやめるっていうのは、「伝説」を作るでしょ。前田敦子は今卒業することで、センターを不動のものにしたんですよ。
そして今回東京ドーム「1830m」を観にいかせていただいたんですが・・・ただの古参として言わせてもらえば、涙涙ですよ。もう、7年前あんなにピヨピヨしてた子たちがこんなに大きな存在になっていったことがまずうれしい。大人になりましたね。いろんな意味で。成長しました。変わってしまったな、って思うこともあるけれど、なにより成長がうれしかった。きれいになったし、歌もうまくなったし、そんな言葉にできること以上に、オーラがあります。あの時、披露会でみたときの輝きとは少し色を変えてしまったけど、それは大きなオーラでした。だからこの子たちの後ろに、道は続いてきたんだ、と。私は泣きながら思ってました(笑)
今のAKBのファンの中では、次世代論争が激しく行われてて。オタ卒*5のきっかけになる今。前田敦子なき今後のAKBがどうなっていくかが、AKBの本質の見所ですね。
*4古参:古くからのファンのこと。反対語は「新規」。○○が発売されたときにファンになったことを、「○○新規」ということもある。(例:大声ダイヤモンドが発売されたときにファンになったひとを、「大声新規」など)
*5オタ卒:オタクをやめること。気持ちがなくなったときが最高のやめ時だが、「なくなりかけ」程度が続くときはキリのいい出来事に便乗してやめたりする。
”「なんだとお前見届けてやろうか!」と思わせることがすごい”
―――これから、AKB48はどうなっていくと思いますか?
アンチがいなくなったら終わりとされるAKB界。東京ドームでの「商品陳列」とされたおんなのこの並べ方や、順位を決めてその人の待遇を決める選抜総選挙、じゃんけん選抜。握手券や写メ会など、CD業界異例のミリオン連発。それを、トップニュースとして報道するマスコミ。テレビ番組の私物化。一般人の批判のみならず、組閣*6や突然の解雇、特定メンバーのゴリ推しなど、ファンまでもを翻弄して、時にはアンチにさせながらAKBは肥大化してきました。もっとも、秋元さんは「アンチ」って曲を作ったり「嫌われる勇気を持ちなさい」というくらいだから、それを楽しんでいたりするんだけど(笑)
私は前田敦子ちゃんが卒業すると発表した時、ああもう終わる!と思いました。敦子なしでどうやってやってくの敦子敦子敦子って思ってました(笑)でも、この前の組閣でなにをしてるんだこいつらはと思ってると同時に「なんだとお前見届けてやろうか!」と思ってる自分に気付いて。ああ、なんかすごいなって思っちゃいましたね。その時。
そうやって、話題性重視で、他のものが欠けてたりもするけど(笑)目が離せなくなってしまう。アンチも、見てると「お前大好きだな」って人ばっかりだったりしますからね。そのワクワク感が途切れない限りは、AKBはこれからも「国民的アイドル」として君臨し続けるのではないでしょうか。まだ、前田敦子ちゃんのいないAKB、ちゃんと想像できないんですけどね(笑)
*6組閣:AKB48にはA、K、B、4と4つチームがあったが、そのチームのメンバーを入れ替えること。今回で2回目。今回の組閣では、チーム4がなくなった。
―――アイドル業界は、どうなっていくと思いますか?
今ってちょっと、不思議な時代だと思うんです。ニュースでいろんなアイドルのイベントが取り上げられたり。アイドルが溢れるようになったというか・・・。ほんと、いろんなところで見ますから。渋谷に出れば、今は「前田敦子卒業宣言!」っていう広告が大々的に貼られ、スーパーに行けばももクロのアイスの宣伝があったり・・・。いろんな方向性の人たちを、いろんな方向性のアイドルが吸収しているというか。アイドル好きな人は、48系。サブカルが好きな人は、ももクロ。オシャレな感じが好きな人は、パフュームだったり。バラエティが好きなひとは、ももちとか道重さゆみちゃんとかが好きかもしれない。そうやって、あらゆる方向に芽が出てて、好きなところを摘める、というか。でも、いつの時代でもアイドルが必要なのは事実で。「アイドル」として存在しないときは女優だったり、スポーツ選手だったり、モデルだったり、必ず時代の中でおんなのこは必要とされてきたんです。それが今、「アイドル」として「アイドル」が存在している。 たくさんのアイドルがいるけど、誰かがだめになったらその代りに誰かって形にはならないんじゃないかな。今はもう、ほんとに多方面化してきて、しかもそのニーズに合わせるようにアイドルが生まれるようになってきているから。ひとつのグループに飽きたら他のグループを応援するってことはあるかもしれないけど、ひとつのグループがだめになったから、他のグループをその代わりに起用!ってことはないと思うなぁ。グループがだめになったら、そのときはアイドルの衰退ですよ、きっと。「アイドル」のサイクルが、次の時代へ向かうだけです。
ただ私は、餅は餅屋派です。「アイドル」がアイドルをして、「女優」が演技をして、「声優」が声のお仕事をする。「スポーツ選手」が、スポーツをする。「アナウンサー」がニュースを伝えたり、司会をする。その、線路を飛び越えない方が、お互い長く生きれるし、批判も少ないと思うんだけどね。
とにかく今はまだ、「アイドル」を応援していきたいと思ってますよ!
7年前からアイドルにハマリ、アイドルを見続けているヨン・キモオタさん。「叩かれることが怖い」という彼が、「今喋らなければいつ喋る」と時々「峯岸みなみちゃんの脚がいいんだよね、ぐふふ」「んんんんまなつうううううう」など気持ち悪いことを言いながらもインタビューに答えてくれたのが印象的でした。
よん
よんぶんのいち