2014年1月25日(土)、13:00。
通天閣わくわくランドで幕が開いた。
なんだかよく分からないがとりあえず座ってみてる満員のお客さんの前で、
”オバチャーンのテーマ”が流れ出す。
「まさかのファッションでおばちゃんが通る!」
センター舟井が叫ぶ。
まさかの生歌である。
前回、CD発売イベントを行った時はかぶせが8割、生歌2割くらいの
ボリューム比率だったのに対し
今回はほぼ生歌が聞こえている。
しかしみんな歌うことに気を取られているせいか
これでもかというくらい踊りがバラバラである。
結果的に、歌うことも踊ることもままならない。
MC、”オバレゲエ”と続く。
なんとか笑顔で乗り切るが、クオリティの低さは否めなかった。
ただわちゃわちゃしているのと、個性が輝いているのは違う。
これは明らかに、 ただわちゃわちゃしているだけだった。
2部を前に、プロデューサーがオバチャーンに言う。
「このままじゃ紅白どころかミュージックステーションにも出られない」
オバチャーンはこれでも紅白を目指すアイドルなのである。
これじゃあ、テレビでパフォーマンスを披露するなんて
夢のまた夢だ。
15:00。
やはり通天閣展望台へとつながるわくわくランドは人の入りが激しいためか
2部も満員である。
舟井・宇口による場内アナウンスが響く。
「みなさまに注意事項があります。とぅぃったー、ふぇいすぶっくなどによる拡散は…どんどんしてください!」
ウケた。
掴みはばっちりだ。
そして幕が開く。
さっきと構成は全く同じにもかかわらず、
遥かにパフォーマンスが向上していた。
体があったまったか、
プロデューサーの喝のおかげか。
”オバレゲエ”では、後ろのメンバーである竹峰が客席に突入し
客席の心を完全に掴む。
オバレゲエを強制的に客席に踊らせることにも成功し、
無事に2部の幕が閉じた。
CD売上枚数、17枚。
そこそこの出来ではある。
しかし、その裏では
ある問題が起きていた。
それがオバチャーン格差問題である。
「仏セブン(選抜メンバー)の7人ばかり目立って、他のおばちゃんが目立たない」といって
嫉妬したおばちゃん30名が大量卒業したのは記憶に新しいが、
13人になった今でも仏セブンとその他の格差は埋まらない。
その証拠が、これだ。
楽屋にはイスが9個しかないため、
必然的にイスに座るメンバーとござに座るメンバーが出てしまう。
仏セブンと2人はイスに座ってわいわい喋っていたが、
ござ行きとなってしまったメンバーは照明のないござで、
静かに新聞を読んだり、せっせとメイクをしたりしていた。
仏セブンを食ってやるという勢いがあるのは、
竹峰だけだ。
竹峰は客席に突入していったように、
”オバレゲエ”で歌のうまさで発掘されて以来隙あればグイグイ目立ってくる。
自作のこの衣装も、ついついツッコまずにはいられない
オバチャーンの秘密兵器なのだ。
その積極性あってか、彼女は9個しかないイスのひとつを
勝ち取っていた。
問題はイスに座れないチームござである。
チームござに格差について聞いてみたところ、
「仏7は雲の上の存在やね」という回答が返ってきた。
「憧れです」。
(右から迫間、竹峰、西村、福井)
果たしてそれでいいのか。
彼女たちもオバチャーンのメンバーだ。
しかも、30人卒業者が出たときでさえ辞めなかった生き残りなのだ。
―――このままでいいのか。
公演が終わって、スタッフで食事に行った際
格差について問題提起してみた。
すると、彼らも確かにそうかもしれないという。
そこで出た答えが、
「仏セブンと、それ以外のメンバーを入れ替えてみること」だった。
いわば、1軍と2軍の入れ替え。
しかも当日に突然告げられるそれは、
どんな結果をもたらすだろうか。
そして当日、1月26日(日曜日)。
11:30に集まったメンバーに、プロデューサーの口から告げられた。
「今日は立ち位置を入れ替えます。」
歌も、ダンスも、仏セブンとそれ以外では異なるため
メンバーの動揺は計り知れない。
特にチームござの動揺は、すごいものだった。
しかし、「できるの?」と訊かれたら、
「できます!」「やりたいです!」と答える、竹峰や平李。
ただひとりだけ「無理です!」と叫び続けるメンバーがいた。
センターを命じられた迫間だ。
「私は歌もヘタやし、踊れないし、そんなの出来ないですよ!」
「でもやるしかないんやから!」
メンバーの説得により、
リーダーの脇を中心としたダンス練習が始まる。
仏セブンは、入れ替え宣言を受けて
何も言わなかった。
一様に普段見られない静けさでダンス練習を見ていた。
脇は普段幼稚園の先生をしているが
その先生魂が開花したかのように
熱の入った指導をかましていた。
「音楽ちゃんと聞いて!」
「ここはこうやで!」
「顔で喋ってね!」
燃え立つ脇。
その横で迫間は、緊張のあまり「間奏の喋るんとかできませんよ!?」と逆ギレの勢い。
必死でダンスを覚えるメンバー。
どうなってしまうのか。
10分もせずに、公開リハーサルがはじまった。
まずまずお客さんが入っている。
プレッシャーのあまり、普段と同じダンスでさえ
分からなくなってしまう迫間。
横に立つ宇口ポジションの福井も、笑顔でやってはいるが踊りはぐっちゃぐちゃだ。
もちろん、ちゃんとやることが目的ではない。
入れ替えで何か得ることが必要だった。
公開リハーサルを終えて、楽屋に帰ると同時にダンス練習が始まる。
しかし迫間はプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。
「こんなん、お客さんに申し訳ないですよ…」
壁にもたれかかって、ぐったりしてしまう。
見かねたプロデューサーが言った。
「分かりました、本番はいつものに戻しましょう。
でも、みんな歌えるようにしてきてくださいね」
ほっと胸をなでおろすチームござ。
「次までには練習しておきます!」
その熱意が欲しかったのだ。
13:00。舟井・宇口で固定していた場内アナウンスも、冒険してみようということで
有田・奥で始まる。
「松阪慶子です!」
有田が得意のモノマネを披露。
アイドルは、かわいいかわいくないではない。
パフォーマンスでもない。
自分にできることを最大限活かすことが、最も必要なことだ。
彼女らはようやく模索し始めたのである。
相変わらずの満員で、ステージが始まった。
1部終了時、既にCD売上枚数が昨日の16枚を上回る。
14:00、2部。
脇・藤本による場内アナウンス。しっかりものとセクシー担当による場内アナウンスは、
大人な笑いを取りに行った。
2部はお客さんもあたたかく、よく笑うしよく踊る。
15:00、3部。迎える千秋楽。
オバチャーンのテンションもあがりまくっている。
会場も、今までにないほどの超満員だ。
後ろからでは、前が見えないほどだった。
大喝采で終了。
ここで変化が起きた。
今まで、終演後すぐお客さんがまばらになってしまっていたのに
なかなか帰らない。
みんなオバチャーンと写真を撮ろうと
CDを買い、列に並んでいるのである。
その後しばらく続き、人生相談会も今までにないほど
たくさんのお客さんが訪れた。
CDは昨日の2倍33枚という高セールスを記録。
たかが33枚というかもしれないが、ピチピチの若い女子じゃない、
平均年齢63.5歳のアイドル”オバチャーン”のCDだ。
みんなファンなわけではない。
パフォーマンスを見て買ってくれたのだ。
すべて終わったあと、センター舟井が言った。
「だんだんよぉなるやろ?全然疲れてない、明日もやりたいわ!」
もちろん、仏セブンだからといって気楽に構えていたわけではない。
有田は入れ替え宣言を受けて動揺しすぎて、その日ひとりではトイレにいけない体になってしまった。
わたしはトイレまで連行されたが、めちゃくちゃ喋るのに
「入れ替えどうですか?」と訊いた瞬間だんまりを決め込まれるくらい、
仏セブンにとっても入れ替えは大事件だった。
入れ替えを経験した彼女らが、これから先どんな成長を遂げるのか。
アイドル界にも、大阪にも、オーバー60にも希望と衝撃を与える
”オバチャーン”の物語はまだ始まったばかりだ。
オバオタ 米原千賀子
以前オバチャーンにインタビューしたときの記事はこちらから
http://usaoja.blogspot.jp/