わたしはなんとなしに小さな韓国料理屋さんに入った。
カウンターしかないこじんまりしたお店で、
わたしの両隣には60代くらいのおばちゃんが座っていた。
どうやら2人は常連であるらしく、
時々会話を交わしたし、マスターともよく喋っていた。
そのうち、右隣のおばちゃんが喋り出した。
「昨日な、うちの犬が死んでしもたんよ」
おばちゃんは溢れ出す涙を止められない。
「16年生きた。
今日はあの子のお墓を買いにきてん。
うちの旦那はな、あの子に冷たかったけど、
わたしは犬に生きた人生やった。
何よりもあの子が大事やった。
寝たきりでも生きててほしかったんだけど、
あの子はつらかったやろね。
ごめんな。お嬢ちゃん、泣いてしもて。ごめんな。
ビビンバおいしいな。
おいしいごはん食べて元気出さなあかんな。」
話を聞いて、わたしは
自分はペットを飼ったことがないけど、
たぶん飼うこともないけど、
彼女にとってぷー太郎(犬)を失うということは、
ありきたりだけど「家族を喪う」ということに他ならなくて、
その大きな悲しみを目の当たりにして
ふたりで涙の石焼ビビンパでした…
左隣のおばちゃんも、わたしも、
どうにか右隣のおばちゃんを励ましたくて、
たくさん話を聞きました。
右隣のおばちゃんはそのことをとても喜んでくれて、
気が付けばその日は「今日は3人の絆が生まれた日」と命名されました。
そして「わたしはあなたのお母ちゃんの気持ちになってきた」と
とんでもない錯覚まで覚えさせ始めてしまいました。
最後には電話番号を交換して、
「大阪へ来たら、いつでも連絡し。絶対カラオケいこうや、絶対やで」と
韓国料理屋ですらおばちゃんとの絆が生まれてしまいました。
そのうち大阪のおばちゃんハーレムが築けそうな気がするわたしの、大切なメモリーでした。
よん

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